1次予選2日目(その1)
演奏曲はこちらを参照ください。
- 84 シエ ジンチュエン XIE Jingquan 中国
写真を見るとまだ幼い感じだが、演奏も同様。ペダルの使い方がイマイチなのか、Bach, Beethovenとも響きがあまりコントロールがされておらず、細かい音型がクリアに聴こえてこないし、Beethovenはフレーズの切れ目も曖昧になりがち。Lisztももう少し輝かしい音がほしいところ。中間部もダラダラとしてあまり歌えていない様子だった。
- 83 ウォン ジョンホ WON Jong-Ho 韓国
Bachは前のJingquanと同様、響きが整理されていない感じだったが、フーガから立ち直ってきて、MozartとChopinはなかなかよかった。Mozartは表現のツボを押さえており、指回りも淀みない。Chopinも新鮮味はないが手馴れているというか余裕があり、安心して聴けた。
- 36 アダム コシミェヤ Adam KOSMIEJA ポーランド
Bachは各声部をそれぞれ出すような工夫あり、好感が持てた(さらに音色やタッチの変化があればよかったけど)。Beethovenも、主題提示部の細かい動きはもう少しクリアにしたかったが、音が充実しており、展開部のトリルもよくキマっていて悪くない。Schumannも難曲だが流れがありうまくまとめていた(細かいとこでではもう少し改善してほしいところはあるが)。
- 12 伏木 唯 日本
Bachは最初のJingquanに比べればずっと感じが出ていてよかったが、Beethovenは同じく前のKOSMIEJAと比べると非力さが目立ってしまった。音に体重が乗っていない感じで、表層的な浅い打鍵になっている。Lisztも丁寧だけどスケール感や表情の豊かさがもっと出てくるとよい。
1次予選2日目(その2)
- 19 ホアン シンウェイ HUANG Shih-Wei 台湾
Bachは表情に工夫があってなかなか聴かせたが、Beethovenはちょっと淡泊で、もう少し大きな起伏のようなものがほしい感じがする。Chopinも口で言うのは難しいがいろいろと細かいことが重なってもう一つ胸に響いてこない。彼女とは相性が悪いのかもしれない。
- 56 オシプ ニキフォロフ Osip NIKIFOROV ロシア
Bachはとてもintimateな演奏で、Haydnも羽根のような軽やかで繊細なタッチがとても印象的。特に弱音が美しい。(日本人は子供の頃から鍵盤の奥までしっかり押すようにと教えられているせいか(?)なかなかこういうタッチができない。)最後のBrahmsパガバリも、メカニック的には特に印象付けるというほでではないが、フォルテ和音での輝かしい音など、やはり音がよい。全体的に響きに非常に敏感であることが窺える。
- 66 佐野 主聞 日本
Bachは健康的な演奏。Haydnも悪くないが、直前のNikiforovの印象が強すぎるので、それに比べるとちょっと印象が薄くなるのはやむを得ないか。最後はChopinのノクターンと、難度の高い曲を持ってこなかったのはリスクが高そうだが、通過するのに有利・不利とかあまり考えず、自分の弾きたい曲を弾くというのであれば、それもアリと思う。
- 41 リ ハンチェン LEE Hanchien 台湾
Bachはまずまず無難な出来。Haydnも完成度高く、指回りも安定。ただ2次に進むにはもう少しアピールするものがあるとよいか、と思ったら最後のChopinでそれが出来たかも。主題のオクターヴ音型にスピード感があってテクニック的になかなか聴かせる。欲を言えば中間部のスダレの部分はさらに繊細な感じになればよかったけど。
1次予選2日目(その3)
- 48 ロマン マルチノフ Roman MARTYNOV ロシア
Bachは弾けるように始まる、かなり個性的な演奏。だが面白い。Beethovenは割とオーソドックスでツボを押さえた表現。ロシア出身だけあってNikiforovと同様軽やかなタッチも見せている。ただ提示部で弾き直すような大きなミスがあったのが痛い。個人的にはこのミスで落ちるには惜しい人である。
- 78 アンナ ツィブラエワ Anna TCYBULEVA ロシア
Bachはゆったりと柔らかい音でとても優美。歌も感じられてなかなか気に入った。Mozartも明るい音色で悪くないが、サラサラと流れるので個人的にはアゴーギクにも一ひねりあった方が好みだったかも。Lisztは丁寧によく弾いていたけれど、狂詩曲なのでさらにハジけたところがほしかった。やや優等生的でちょっと物足りない。
- 79 ツァイ ミンハオ TSAI Min-Hao 台湾
15歳ということもあってBach,Beethovenとも非常にストレートな表現。若々しいとも言えるが、単調になってしまう嫌いもある。Lisztもメカニック先行タイプで、音楽性の部分は未知数に思えた。
- 60 チュエン ホンボ− QUAN Hongbo 中国
Bachは表情や音色の変化が豊かで、詩情が感じられる。Mozartもやはり音色の変化が随所にあり、メリハリもあってTcybulevaよりも私好み。Chopinもテクニック面でも音楽面でも非常に聴かせる。かなりの実力の持ち主という印象を受けた。
1次予選2日目(その4)
彼女も15歳だが、こちらも年相応の演奏という感じ。Beethovenなど、表現がストレートが過ぎて微妙なニュアンスが全く伝わってこない。でもこういうふうに、若々しい演奏、成熟した演奏、いろいろな年齢層の演奏が聴けるのもコンクールの醍醐味かもかもしれない。
- 24 石田 啓明 日本
こちらは全体的に音がモノクロームでしかも硬い。指は回っているけれど。。子供の頃からメカニック重視で音色作りにあまり気を使っていない日本のピアノ教育の短所が出ているような気がした。
- 20 今西 泰彦 日本
Bachは思い切りのよい表現で、フーガなどかなり速いテンポでちょっと危なっかしいがとてもユニーク。日本人からはなかなか聴けないタイプである。SchubertやSchumannも、日本人にありがちな、丁寧でよく弾けているけど何が言いたいのかよくわからない、というのでなく、(良し悪しは別にして)こういう音楽がやりたい、というのが伝わってくる演奏であった。