第9回(2015)浜松国際ピアノコンクール第2日

2日目で印象に残ったのは演奏順に

  • 17 Daniel HsuのChopinスケルツォ第3番
  • 3 Sergey BelyavskiyのBeethoven熱情ソナタとProkofiev悪魔的暗示
  • 30 German KitkinのHaydn Hob.XVI:23
  • 76 寺元嘉宏のMozartソナタ第16番とLisztファウストワルツ
  • 26 Jean-Michel KimのBeethovenソナタ第10番
  • 8 Chen Hanのイスラメイ

あたり。
ちなみに帰ってからVODで聴いてみると、ホールで聴いたときと結構印象が違う。VODの方が響きが少ないので細かいところまでクッキリ聴こえる(ホールでは気がつかなかったミスもわかる)が、全体的に迫力に乏しいし、もちろん音色の違いも生ほど現れない。

第9回(2015)浜松国際ピアノコンクール第1日

今回は残念ながら初日と2日目しか聴けないので詳しいレポートはなし。初日で印象に残った演奏は、演奏順に

あたり。
全体的に、年齢が高めの人が年の功を見せていた感じだった。

3次予選通過者発表

【1日目】

  • 76 内匠 慧 日本 ○
  • 78 アンナ ツィブラエワ Anna TCYBULEVA ロシア

【2日目】

  • 61 イリヤ ラシュコフスキー Ilya RASHKOVSKIY ロシア ○
  • 33 キム ジュン KIM Joon 韓国 ○
  • 55 中桐 望 日本
  • 67 佐藤 卓史 日本

(○は私がよいと思ったとして挙げた人)

今回の結果は(一応挙げた人3人が入っているが)正直ちょっと驚いた。ここら辺は審査員との好みの違いなのだろう。あるいは(私はあまり詳しくない曲である)Mozartの出来が大きく左右したのかもしれない。
なお、本選は聴きに行かないのでレポートは多分これで最後になると思う。(終わった後に総括みたいのを書くかもしれないが。)

3次予選2日目を聴き終わって

特によいと思ったのは

  • 61 イリヤ ラシュコフスキー Ilya RASHKOVSKIY ロシア
  • 33 キム ジュン KIM Joon 韓国
  • 72 ソ ヒョンミン SUH Hyung-Min 韓国

實川君は演奏自体は悪くなさそうだったが苦手曲が多かったので。。

3次予選2日目(その2)

  • 55 中桐 望 日本

彼女もソロが先。Scriabin3番は悪くないけど、もう少し弱音を効果的に使うとよかったかも。フォルテ和音ももう少し美しく響かせたい。Schubertは中間部のフォルテ部分がよかった。Ravelのオンディーヌは弱音はよいけど、やはりクライマックスのような強音和音になるとちょっと力みというかヒステリックな音になるのが残念。スカルボは細部をもっとクリアにしたいところ。ちょっと平凡な出来だった。Mozartは悪くなかった。(こうなるとこの曲ではあまり差がつかないのかもしれない。)

  • 67 佐藤 卓史 日本

Mozartはさすがに上手さを感じる。ちゃんと目立っているが引くべきところは引くといった感じ。終楽章での名技性も出ていた。Korngoldはきっと彼の好きな曲なんだろうけど、正直あまりピンと来なかった。最後のLisztソナタは2次での交響的練習曲と同様、ガンガン攻めるタイプの演奏。ただフォルテ和音の美しさに関してはKim Joonの方がよかった気がする。

  • 72 ソ ヒョンミン SUH Hyung-Min 韓国

Mozartはよく歌っていてよかった。(そういえば弦の配置が変わってvcが真ん中に来ていた。これも彼の希望なのだろう。)ソロに入ってBartokソナタは第1楽章はメチャ激しいが、これぞBartokといった感じ。重低音がビシビシ炸裂していた。最後のSchumannも音響が豊かで語り口も上手い。スケールも大きく自然な起伏が感じられる。この曲は2次の佐藤君も名演だとおもったが、さらに上をいく感じだった。

3次予選2日目(その1)

演奏曲目はこちら

  • 61 イリヤ ラシュコフスキー Ilya RASHKOVSKIY ロシア

Mozartはやや大きめの音で存在感のあるピアノ。主役というか主導権を握っており、弦による伴奏つきピアノソナタのような趣さえあったが、アピールするにはそれくらいでよいかも。ソロに入ってダンテは相変わらず充実した音。なぜか2次の中桐さんのときのようにゾクゾクっとはしなかったがよい演奏だった。最後の展覧会の絵はさらに感動的で、特にババヤーガでの迫力はまさにロシアの底力といった感じ。キエフの大門に来てやっぱりゾクゾクきてしまった。

  • 33 キム ジュン KIM Joon 韓国

Mozartは悪くないが終始ピアノが出ている感じで、出るところと引くところをもう少しメリハリつけてもよかったかも。ソロに入ってからが彼の本領発揮で、プロコ7はスピード感、キレともに十分。2次の出来からしてかなり期待していたが、それ以上だった。Lisztソナタもオーソドックスなスタイルだがスケールが大きく、テクニックも冴えていた。

  • 26 實川 風 日本

彼はソロ曲からスタート。Scriabin幻想曲はそれほど詳しくない曲だが、悪くなさそう。続くProkofiev, Tchaikovskyはどちらかというと緩徐系の曲。音色で聴かせていた。最後のSchumannファンタジーは昔からの大の苦手曲なのでこれもはっきり言えないが、第1楽章出だしの掴みはOKといった感じ。だがやはり苦手曲は苦手曲。正直長く感じた。Mozartは今回2人目の2番だったが、内匠君よりよかった気がする。終楽章は楽しげだったし表情も豊かで目立っていた。

3次予選課題曲

こちらにあるが、Mozartの

のうちから1曲と、自由曲によるソロリサイタルによる計70分のプログラムである。
室内楽を入れたのは今回の浜コン課題曲の目玉で、海外のコンクールではよくあるが、実際に聴くは初めてなのでどんな風になるのか興味津々である。

3次予選1日目を聴き終えて

よいと思ったのは

  • 76 内匠 慧 日本
  • 11 アシュレイ フリップ Ashley FRIPP イギリス
  • 56 オシプ ニキフォロフ Osip NIKIFOROV ロシア

阪田君もノルマはよかったけどDebussyの印象が弱かったかな。Martynovも1次、2次から好きだったのだけど、残念ながら今回はソロ曲がよくわからないので。。

3次予選1日目(その2)

Mozartは最初はやや抑え気味のようだったが、修正してだんだん音が出るようになった。もう少し硬質で透明感のある音かと思ったら、意外とまろやかな音であった。Debussyは静謐な演奏。続くBrahmsパガバリ第1巻も最初はちょっと固かったが、進むにつれて調子が出てきた感じ。スケールが大きいとかメカが強靭というわけではないが、やはり音が美しく、詩情を感じさせる。最後のコーダでは思わず心の中で頑張れと応援していた。最後のDance macabreもLisztらしい輝かしい音が気持ちよい。

  • 48 ロマン マルチノフ Roman MARTYNOV ロシア

2次では個性的な解釈を見せていたので、どんなMozartになるのかと期待していたが、ピアノが特に目立つこともなく意外と普通。逆にちょっと肩すかしを食った。続くソロはMedtnerのソナタ1曲のみ。実はこの曲はよく知らないのでコメントができない。

  • 78 アンナ ツィブラエワ Anna TCYBULEVA ロシア

Mozartは音がよく伸びるというか通る感じ。終楽章も音がくっきりしていて悪くない。ソロのScriabinも第1楽章は音よく響いてよいのだが、第2楽章はノリというか動きのキレが今ひとつ。2次予選でも感じたが彼女はリズムの扱いがもう一つなのかもしれない。Schumannも同様で、緩徐変奏では響きが充実しているのだが、急速曲では動きが少し重くモッサリした印象。またフォルテは力が入り過がなのかちょっとうるさく感じる。あと繰り返しをすべて行っていたが、ちょっとくどい感じで、適当に省略した方が流れがよい気がした(楽譜に忠実といえば忠実なのだけど)。

3次予選1日目(その1)

演奏曲目はこちら

  • 65 阪田 知樹 日本

Mozartのピアノ四重奏曲はあまり詳しくない曲、かつトップバッターで比較相手がないのではっきり言えないが、それほど悪くなさそうという感じ。Debussyエチュードもオーソドックスな解釈でメカも安定。ただ全体的に慎重に丁寧にいっているような印象で、もう少し思い切りよくてもよい気がする(たとえば4度のクライマックス部分とか)。あと響きが美しいと感じられるようになっていればよかった。最後のノルマも技術的に非常に安定していて、メカが優れていることがよくわかる(クライマックスの難所でちょっとハズしたのは惜しかったけど)。欲を言えば中間の緩徐部分は雰囲気を変えてもっと歌いたかったし、アルペジオは高音部をもっと煌めかせられるとよかったかも。

  • 76 内匠 慧 日本

Mozartは第1楽章展開部など、全体的にちょっと控えめだったかも。自分が出るところを弦が出るところをもう少しメリハリをつけてもよかったと思う(やや伴奏に徹しているような印象)。阪田君もそうだったが、終楽章ももっと愉悦感を全面にだしてほしい気もした。ソロのHaendelはまずまず、Babazhanyanもビート感のある現代曲で特に終曲は楽しめた。(委嘱作品もこういう曲だと面白いのだが。。)続くChopinの幻想曲もツボをよく心得ている。今回この曲を何回か聴いたが、その中では一番しっくりきた。音に力みがないのがよい。最後のイスラメイは、インタビューで、以前は速めのテンポで弾いていたが正しいテンポに戻したと言っていたので、落ち着いたテンポで弾くのかと思ってたら、十分に速いテンポで攻めていた。特にオクターブがスムーズ。なかなかのテクニシャンであることがわかった。

  • 11 アシュレイ フリップ Ashley FRIPP イギリス

Mozartは、これまでの日本人と違って出るべきところは音がよく出ていて、協奏曲を聴くような面白さがあった。(日本人は、出しゃばらないようにという意識が強く働くのだろうか。。)ソロに入って、フランス組曲は端正な表現ならがも表情が豊か。繰り返し時に装飾音を結構変えているのが印象的だった。ブーレで一瞬止まりかけたのが惜しい。Bartokはパーカッシブな曲だがあまり金属的にガンガン叩かず、最後のTotentanzも技巧派ぶりを見せながらも音楽重視で決してうるさくならないのが彼らしい。特に緩徐部分での音色や歌わせ方が聴かせた。