2次予選1日目(その2)

  • 84 シエ ジンチュエン XIE Jingquan 中国

Chopinエチュードは(1次のときも思ったが)ペダルワークがいまいちなのか音がこもってヌケがよくない。また途中ちょっと崩壊気味だった。Schumannは音色は悪くないけど緩急の面で歌心があまり感じられず、メインのShostakovichも冒頭部分の音ヌケが悪さが気になる。彼女は1次無印組だが、残念ながら2次で見直すということにはならなかった。

Mendelssohnのロンカプは1次で見せたような繊細なタッチが印象的。細かい部分の表現の完成度が高い。Chopinの10-2も右手があくまで繊細。ちょっとミスはあったが音楽的である。Scriabinの8-12も音がよく響いて力強い。最後の夜のガスパールも、オンディーヌ出だしのデリケートなタッチが素晴らしく、スカルボも生で聴いた演奏としてはかなりの出来。良い演奏を聴かせてもらったという感じである。1次もそうだったが、全体として彼は繊細なタッチが特長と言えそう。(スカルボは後でVODで聴くと結構ミスが多かった。細かいところはホールだとあまりよく聴こえないので脳内補正してしまうが。)

  • 66 佐野 主聞 日本

エチュード2曲から開始だが、これがいずれも今ひとつで印象を悪くしてしまった。Chopin 10-1は右手の粒立ちもう少しよくしたいところだし、Rachmaninov 39-5は力感、重厚感が不足し、動きもちょっとモッサリしている。彼は1次も技巧的な曲を弾かなかったが、ここにきてメカの弱さがバレてしまった感じである。メインのChopin幻想曲も音色や解釈の方向性はよいのだけど、技術的制約からか盛り上がる部分でもあまり加速できず畳み掛けが不足している感じだった。

  • 48 ロマン マルチノフ Roman MARTYNOV ロシア

Chopin舟歌は、昨日の佐藤君もこの半分くらいでも歌っては、というくらい起伏が大きくよく歌う演奏。ちょっとやり過ぎてChopinというよりロシア音楽になってしまっているかも。でも面白い。続くBergもどこかロシア風。表現の振幅が大きく、コントスラストも激しい。しかもポリフォニックな面でも立体的。この曲も昔からの苦手曲だが、こんなに面白く聴けたのは初めてかも。(ひょとしてこれが開眼のきっかけになったりして。)エチュード系のChopin 10-2も靄のかかったような雰囲気の表現がかなり個性的で、日本人でこんな風に弾く人はまずいなさそう(多分先生が許さない)。Scriabin 8-9もすごくメリハリがきいている。全体として、今回の個性派No.1は彼かもしれない。