1次予選5日目(その4)

  • 28 加藤 大樹 日本

前回3次まで進んでいて、私も結構買っていた加藤君。Bach前奏曲は至極ストレートな演奏だがフーガはスタカート気味のタッチが小気味よい。Beethovenも多少ミスはあったがまずまず。問題は勝負曲のLiszt(今回この曲を弾いて失敗している人が多い)だが、出だしの調弦部分から鳴りがよく期待させる。前半もまずまずの調子で乗り切った感じ。しかし後半は終盤の跳躍を結構はずすなど(音の輝きやスケール感はよいと思うが)やや微妙なところ。でもやはり彼はポテンシャルを感じるので2次でもまだ聴いてみたい。

  • 37 桑原 志織 日本

Bachは打鍵がちょっと浅く、曲想もやや一本調子。フーガも少し指の運動的で、いかにも高校生っぽい演奏。ちなみにこの曲に関しては昨日聴いたDyussembayevaの大伽藍を思わせる演奏が非常に印象に残っている(残りの曲は残念な出来だったけど)。Beethovenも表面的・皮相的に聴こえてしまう。曲のツボを押さえていない感じ。最後のLisztだけは勢いがあって今の彼女に合っているようである。

  • 62 パヴェル ライケルス Pavel RAYKERUS ロシア

Bach前奏曲は表情がほとんどなく素っ気ない。フーガももう少し音色の変化など工夫があってもよい。Schubertはちょっと弾き急いでいる感じで、まるで制限時間を気にしているかのよう(余裕はあるはずだけど)。もう少しじっくり落ち着いて弾き進めたいところ。Lisztは奇しくも前の桑原さんと同じ曲(この曲を1次で選んだのは2人なのに)だが、メリハリなど表現の上手さはこちらの方があったかな。